ユネスコエコパークとは
ユネスコエコパークは、ユネスコ(UNESCO)の取り組みのひとつで正式な名前は「生物圏保存地域」といいます。ユネスコエコパークは人が自然を守りながら自然を学び、持続的に「自然と人が共生する」地域を目指すものです。
なぜユネスコエコパークが必要なのか
現在、世界中では人間の活動を原因とする自然破壊によって地球温暖化・森林破壊・砂漠化などといった環境問題によって人と自然が共に生きるためのバランスが崩れています。そのため、私たちは自然を守りながら自然を活用する形を探すことが重要なのです。
志賀高原では、豊かな自然が広がり昔から人々が木材や食材を採取する一方で、木材等を採りすぎないためのルールを作ることで自然を壊すことなく大切に守ってきました。
自然を大切にする意識は今でも引き継がれており、志賀高原は「人と自然が共生する地域」として世界的なモデル地域“志賀高原ユネスコエコパーク”に登録されています。
人と自然の共生のために、
ユネスコエコパークは
目的ごとに3つのエリアに
分かれます。
日本のユネスコ
エコパークは、
志賀高原の他に
10か所あります。
●1980年登録
- ①志賀高原
(長野県・群馬県) - ②白山
(石川県、岐阜県、富山県、福井県) - ③大台ケ原・大峯山・大杉谷
(奈良県・三重県) - ④屋久島・口永良部島
(鹿児島県)
●2012年登録
- ⑤綾
(宮崎県)
●2014年登録
- ⑥只見
(福島県) - ⑦南アルプス
(山梨県、長野県、福井県)
●2017年登録
- ⑧祖母・傾・大崩
(宮崎県・大分県) - ⑨みなかみ
(群馬県・新潟県)
●2019年登録
- ⑩甲武信
(山梨県・埼玉県・長野県・東京都)
志賀高原ユネスコ
エコパーク
志賀高原ユネスコエコパークは、山ノ内町・高山村・草津町・嬬恋村・中之条町の長野県と群馬県の5町村にまたがっています。
かつての火山活動による志賀山・笠ヶ岳・草津白根山など多くの山があり、その高原には原生的な亜高山帯針葉樹林、川が刻んだ深いV字谷、多数の湖沼や湿原が広がり、たくさんの動植物の住みかとなっています。
志賀高原にある湖沼は、火山の火口跡に水が溜まってできた火口湖、火山の活動によって河川がせき止められてできたせき止め湖、火山の凹凸な地形の凹地に水が溜まってできた湖沼の3つのタイプがあります。
亜高山帯針葉樹林
火口湖-
凹地にできた湖
やまのうちに生息する生きものたち(一例)
哺乳類 | ツキノワグマ |
---|---|
ニホンカモシカ | |
オコジョ | |
ニホンザル | |
ヤマネ | |
ノウサギ | |
アカギツネ(キツネ) | |
鳥類 | イヌワシ |
ホシガラス | |
キクイタダキ | |
ヒガラ | |
メボソムシクイキ | |
ルリビタキ | |
エナガ | |
アカゲラ | |
クロジ | |
アオゲラ | |
カワガラス | |
ミソサザイ | |
チョウゲンボウ | |
魚類 | イワナ(亜種名ニッコウイワナ) |
サクラマス(ヤマメ) | |
ホトケドジョウ | |
ヒガシシマドジョウ | |
カジカ | |
水生昆虫 | カワゲラ |
オンダケトビケラ | |
は虫類 | ヤマカガシ |
マムシ | |
シマヘビ | |
ジムグリ | |
両生類 | ハコネサンショウウオ |
モリアオガエル | |
クロサンショウウオ | |
タゴガエル | |
アズマヒキガエル | |
アカハライモリ | |
トウキョウダルマガエル | |
昆虫類 | オオルリボシヤンマ |
カオジロトンボ | |
アキアカネ | |
ベニヒカゲ | |
ギフチョウ | |
アサギマダラ |
山ノ内町では、先人たちが守ってきた自然を保全(守ること)しながら、自然を活用(生活に利用すること)して持続的に自然と共に暮らすことを目的に次のような取り組みをしています。
自然にやさしい道路開発
長野冬季オリンピック(平成10年)の開催に向け、志賀高原内の道路が整備されましたが、動物・植物の生態などを壊さぬよう十分な配慮がされました。
ABMORIプロジェクト
歌舞伎俳優の市川團十郎さんからの提案「地球のため、日本の美しい四季を守っていくため何かしたい」を受けて「いのちを守る森づくり」として自然豊かな森に戻すための活動ABMORI(エビモリ)がスタートしました。ABMORIは閉鎖されたゲレンデに植樹する森林再生活動です。
環境学習プログラム
実際に志賀高原の自然の中を歩いて、公認ガイドから説明を受けながら自然の大切さや自然と人の共生について学ぶプログラム。毎年、全国から多くの学校が志賀高原を訪れ体験します。
自然エネルギー
温泉熱利用、雪氷熱利用などが進められています。これは自然から絶えず得られる「再生可能エネルギー」と呼ばれる地球にやさしいエネルギーです。
温泉熱利用:
温泉の豊富な湯量を活かし、かえで保育園では暖房や室内プールに温泉熱を利用しています。
雪氷熱利用:
冬に降った雪を建物の中に入れ、電気を使わずに自然のエネルギーで冷却する天然の冷蔵庫です。冷熱を利用して果樹やそばなどを保管しています。
サバタケ
初夏、志賀高原山内で採れるネマガリダケをサバ水煮缶と食べる「タケノコ汁」が郷土料理として食べられています。
夏しか採れないタケノコですが、通年で味わえる「サバタケ®」のレトルトパックが開発され観光客の方からも大好評です。
須賀川そば・はやそば
そばのつなぎは小麦粉が一般的ですが、須賀川地区では雪が深く小麦の栽培ができないため、オヤマボクチの葉をつなぎに使う「須賀川そば」が有名です。また、「はやそば」はゆでた千切り大根に、そば粉を入れて手早くかき混ぜ、出汁つゆを入れて食べます。もともとは農作業の合間に食べられていた「はやそば」ですが、今では長野県の無形民俗文化財に指定されている郷土食です。
山の恵み
古くより人々は志賀高原の樹木やネマガリダケなど山の資源を活用して、炭焼き、竹細工、白箸づくり、ろくろ細工などが行われてきました。一方で、山の資源を取りつくさぬよう樹木の伐り出しを制限するなど、人々は江戸時代から山の恵みを利用するとともに自然を大切にしてきました。
ろくろ細工
水の恵み
江戸時代から明治時代にかけて水田開発のため水を引く堰が築かれました。下流の村々が水を利用する権利を持っていたため、夜間瀬川や樽川流域から水を引くことができず、遠くの雑魚川などの流域から苦労して堰を引きました。
現在は剣沢ダムが造られ、そこに貯めた水を一部地域では果樹栽培の散水に使用していますが、当時築かれた堰が今でも使用されています。
また、志賀高原を水源とする河川の豊富な水量は水力発電に利用されています。
1911年に日本に伝わったスキーは、またたく間に各地に普及しました。志賀高原では、1946年にアメリカ進駐軍が日本初のスキーリフトを丸池に建設しました。昭和30年代からはスキーリフトやゴンドラが続々と建設され、日本最大級のスキーリゾート地としてにぎわっていきます。標高が高く雪質が良い志賀高原は町外から多くのスキー客が訪れるようになりスキー修学旅行で訪れる学校も増えました。
私たちの取り組み
志賀高原ユネスコエコパークにある山ノ内町と高山村の小中学校は、そのすべてがユネスコスクールに加盟しています。山ノ内町の小中学校では自然体験活動のほか、地域学習に取り組んでいます。
志賀高原ユネスコエコパークにある山ノ内町と高山村の小中学校は、そのすべてがユネスコスクールに加盟しています。ユネスコスクールは、ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校です。ESDは持続可能な社会をつくる担い手を育むための学習です。山ノ内町の小中学校では自然体験活動のほか、地域学習に取り組んでいます。
【東小学校】
長野県内の小学校として最初にユネスコスクールに加盟した東小学校では、閉鎖したスキー場の森林再生を目的とした植樹活動「ABMORI」で植栽する苗を育てる「育苗プロジェクト」に取り組んでいます。志賀高原のドングリ(ミズナラ)から苗を育て、大きくなった苗をゲレンデ跡地に植樹します。6年間かけて学びます。
【南小学校】
「町に点在する共同浴場」を取り上げた学級では、実際に共同浴場に入り、利用者にアンケートをとり学習を進めました。共同浴場が「話しやすくて楽しい場所。人との関わりが生まれる場」になっていることや維持管理する難しさに気づきました。町の方々と意見交換もできました。
【中野西高等学校】
志賀高原でESD 実践に取り組んでいるユネスコスクールです。中野西高等学校では「ESD 倶楽部」を中心に、植樹活動「ABMORI」に植樹リーダーとして参画し、植樹後のモニタリング調査を行っています。また地域の市民団体が実施する湿原再生や外来植物除去などの活動に参加しています。
【西小学校】
地域の特産物であるリンゴの栽培や販売に取り組んでいます。子どもの「自分たちが育てたリンゴを外国から来るお客さんに売ってみたい」という希望から、駅前や地獄谷野猿公苑などでリンゴ販売が実現しました。訪日外国人観光客とコミュニケーションできる英語をALTから学びます。
【山ノ内中学校】
1年生は「志賀高原研修旅行」や「地域自慢の旅」を通して町の魅力を“発見”し、2年生は「草津研修旅行」を通して、魅力の“比較”を行い、3年生では「修学旅行」「町づくり討論会」を行い、魅力の“発信”を行っています。
町づくり討論会では、自分たちが考えた提案について町の方々と討論します。修学旅行では町のPRにも取り組んでいます。